宵闇花火
夕暮れに 手を振る子たち
戻る場所 の無い、私
夜の風と 遊びながら
踏み込んだ 宵闇の中
「君ハ何処ヘ行クノ?」
狐の面が笑う
何処へでも連れて行って欲しい
痛みの無い場所
木々達は さらりと揺れて
唇に 露を落とす
蛍火が 森を照らした
手を取って 誘う狐
「君ト共ニ行クヨ」
銀色の髪揺れる
誓いの簪付けたら
嘆きの無い場所へ
赤い鳥居をくぐり抜け
石畳の其の先で
歌う夜の子達
鬼や鬼 手の鳴るほうへ
闇に浮かぶ彼岸花
紅い色 契彩
鮮やかに川を燃やし
帰り道もわからない
誰からも 触れてもらえず
誰からも 愛されずに
顔は黒く 爛れて
只、隠し 恥らうばかり
「君ハ何ヲ視ルノ」
狐の面が嘆く
美しい心は白い
胸に光っている
夜に咲く鬼火の群れ
祝言を祝う鴉
涙声 囁く声
嗚呼、後ろの正面だぁれ
震える手離さないで
貴方が居れば其れで良い
揺れる影が交差する
切ない声一つに成る